睡眠不足が引き起こす体の不調

睡眠不足が原因となる体調のサインには、メンタルに出るものと身体に起こるものがあります。前者は精神的に不安定になったり集中力や記憶力の低下、後者では感染症にかかりやすくなったり食欲不振やめまいなどの症状があります。こうした不調は原因が他にある場合もありますが、睡眠不足は万病の元であり、次に記すようなより重い症状に進行しますので、注意が必要です。

睡眠不足が続くとストレスがたまり、ストレスホルモンであるコルチゾールが過剰に分泌されて成長ホルモンの分泌が減ることから、肌の老化が進んでシワができやすくなります。またワクチンが効きにくくなりカゼなど感染症にかかりやすくなります。これは、睡眠が短いと感染症を防ぐ免疫プロセスに悪影響を及ぼし、予防や治療のために摂取するワクチンの抗体生成効果を妨げるためと考えられています。

不規則な勤務などで睡眠のリズムが崩れると、人間の食欲に関係するグレリンなどのホルモンのバランスが乱れることで食欲過多になり、肥満になりやすいという研究があります。さらに体内時計が乱れて、メラトニンというがん細胞の発生を抑えるホルモンが分泌しにくくなるため、発がんリスクが高まることが分かっています。

睡眠が不足すると、血糖値をコントロールするホルモンであるインスリンの働きが低下することから、糖尿病を引き起こす一因となります。また心臓への影響は大きく、冠動脈疾患特に狭心症や心筋梗塞になる発症率が大きく上昇するという研究もあります。さらに脳への回復困難なダメージを与えることが心配されています。睡眠不足が青斑核(脳内にある覚醒、注意などを司る神経核)に影響を与える、アルツハイマー病などの神経変性疾患を進めることが、動物実験により明らかになっています。

肥満でなく睡眠時無呼吸症候群でもないのに、脳卒中を発症する確率があがり、寿命を縮める結果になります。体調管理の第一歩として、仕事、学校、家事などの集中力を高めるためにも、毎日の睡眠を賢く確保していきたいものです。

睡眠不足が原因でうつ病になる?

睡眠不足とうつ病にはどのような関係があるのでしょうか。強いストレスなどにより睡眠の質が下がると睡眠不足になり、すぐに眠れない、夜中に何度も目が覚めたりするなどの結果として逆に昼間眠くなる症状が出始めます。例え夜横になっている時間だけ長くても、体の状態としては睡眠不足となる可能性があります。

「寝ているのに昼間眠たい」という状態が続くと、あらゆることにやる気が出なくなります。これは、セロトニン、ドーパミン、ノルアドレナリンという脳内の三大神経伝達物質のバランスが乱れているためです。特にセロトニンは、ドーパミン、ノルアドレナリンの過剰な分泌を抑えてバランスをとる働きをすることから、セロトニン不足になると神経伝達物質全体の働きが鈍くなり、うつ病につながっていきます。感情の起伏がなくなったり、不要な悲壮感に支配されるなど精神障害の症状が現れてきます。

うつ病の多くは睡眠障害を併発しているといわれています。夜中に目が覚めてしまう中途覚醒や朝早くに目が覚める早朝覚醒が約8割、昼間に強い眠気を感じる仮眠症状が残り2割と考えられています。うつの症状は、睡不足と原因また結果の関係になりえます。うつ症状を原因として睡眠が不規則になることで睡眠不足になり、睡眠不足の結果としてさらにうつ病が進行するという悪循環が多くみられます。

また睡眠不足とうつ病は、高血圧とも強い関係があります。高血圧の方の約3割がうつ病の状態であるという研究もあります。理由の一つとして、高血圧とうつ病はその原因が似ていることが指摘されています。具体的には加齢、塩分の過剰摂取、運動不足、強いストレス、飲酒などですが、睡眠不足も要因の一つとなっています。強いストレスから睡眠不足が生じやすく、この同じ原因で高血圧またうつ病が発症する、という相関関係があります。